メンバー:丸山亮介、前川英梨子、永井千加、Lauri Krüger、桂川茜
この班はゲオルグシューマン通り16番の建物のファサードを活用したインスタレーションを行った。空き家で寂しい雰囲気があるファサードに対して「生活感」を期間限定でも蘇らせることをテーマとし、昼と夜で二つの異なるインスタレーションを行った。
「A gift from an empty ruin」
日本などのパブリックな空間に洗濯物を干すイメージから発想を得て、ファサードに洋服を吊るし人の住んでいる風景をつくる事で建物が失った人が住んでいる生活感を出す試みをしました。洗濯物の洋服のそれぞれには、洋服の持ち主のエピソードや洋服のバッググランドのようなストーリが封筒に入っています。その手紙と一緒に、ちょっとしたお菓子も添えておきました。観に来た人が壁に添って垂れる糸を1本選んで引っ張ると、ランダムに選ばれた洗濯物が物干しから落ちてくるという仕組みをつくりました。この仕組みによって、風景をただ眺めるだけではなく来場者が作品に参加できるようになり吊るされた洋服にある背景も体験することが可能となりました。
一番最初に遊んでくれたのは3人のお子さんがいるご家族でした。子供たちは、紐を引っ張って洗濯物が落ちて来て、それにお菓子と手紙が着いているという一連の動作がとても気に行ったようで、壁から垂れ下がっている紐ぜんぶを引っ張ってしまいたい!とはしゃいでいて、廃墟の周りが一瞬にして微笑ましい空気に包まれました。他の来場者の方も紐を引っ張って、次々に起こる予測できない出来事を楽しんでくれました。実際に自分は着れないサイズの洋服を取った人も「面白かったわ」と言って洋服と手紙を家に持ち帰ってくれたりしました。
展示場所であるGSS16の建物は5階建ての大きな建物で、外から見た感じでも他の建物と比べて空気の出入りが無い寂しい雰囲気の建物でした。ワークショップが始まって実際に中に入ってみると、砂やホコリが溜まっていたのもあって空気が重たい感じがしました。でも、作業しながら、1つ1つ窓を開けて建物の中に空気を通してあげることで、だんだんと建物がまた呼吸して生きている感じがして気持ちがよかったです。小さいお子さんからお年寄りまで幅広く皆が糸を引っ張ってくれて、それぞれに楽しんでくれたのが、すごく良かったです。
(文・写真 永井千加)