地域の庭 / Nachbarschaftsgarten e.V.

歴史家ライナー・ミュラー氏は自らライプツィヒ西部に住み、長年に渡り地元の街づくりに関わってきました。リンデナウ地区自治組合(Lindenauer Stadtteilverein e.V.)の設立者であり、また空き家の家主と利用者を仲介するハウスハルテン(HausHalten e.V. / 直訳:家を支えること)の設立者でもあります。地域の庭 (Nachbarschaftsgarten e.V.)の設立も彼が率先しました。彼は地域住民と一緒に街づくりを推進する一方で、地域の歴史を語り継ぐ役割として頻繁にツアーガイドを実践しています。

‪リンデナウ地区のヨーゼフ通りは、かつてはゴミが溢れそれを処理する人もなく、治安の悪い通りでした。パブリックな公園には犬の糞が放置され、散歩に来た人がタバコの吸い殻を投げ捨てていく始末でした。これでは小さな子供を安心して遊ばせる場所がないと相談にきた4人の母親が発端となって、ミュラー氏は2004年に地元の住民と一緒に活動を始めました。‬

‪まずは森のように雑草が覆い茂りゴミ捨て場のように放置されていた空き地に目を付けて、掃除をすることから始めました。ライプツィヒ市リンデナウ地区では、粗大ゴミを処理する際に袋に貼付けるシールが必要になります。このシールを地域の住人100名以上が寄付をした結果、一斉掃除のためにライプツィヒ市から廃棄処理用コンテナを1台支給してもらうことが出来ました。かつては飲料販売店が所有していた小さな2階建ての建物は入口と窓が封鎖されていたため、内部を調べるために屋根の一部を取り壊して消防署の立会いの元で懐中電灯を持って中に入りました。その結果2メートル近くゴミを山積みにして入口と窓を潰していたことが分かり、手探りで入口を内部から突き破ってそこからまずはゴミを運び出して次に窓を開けました。‬

‪現在はこの建物に共有のキッチンとトイレ、そして自転車の修理工房があります。排水工事も自分たちの手ですべて処理しています。‬

「地域の庭」はヨーゼフ通りとジーメリング通りにまたぐ幾つもの区画を合わせた土地で、所有者はスイスの不動産業者からハノーバーの個人と様々です。活動を始めた時点でミュラー氏は各土地所有者に連絡を取り、主旨を説明しました。長期間空き地となっていた場所は、放置しておいても固定資産税が課されます。パブリックな庭として解放することで、支払う税金も減らせ何より地元の人々のためになります。ミュラー氏は実際に土地所有者全員と地元住民、そしてライプツィヒ市の行政の人たちを招いて話し合いをしました。問題点があればどのように解決が可能かを全員で話合しあったのです。そうしてZwischennutzung(過渡的利用/恒久利用ではなく時間的制限あり)の使用許可が下りました。まさに住民による住民のための地域づくりです。

キッチンとトイレ、そして自転車修理工房の共有建物だけでは雨が降った際に居場所がなくて困るので、2006年には藁葺き小屋を手作りで建設しました。地域で手に入る格安材料で環境にも優しいということで藁を採用して、建設費4,000ユーロを集め多くの人々のボランティア活動により完成しました。ここには釜戸を設けて、パンやケーキを焼いて子供たちの誕生日やクリスマスなどにパーティを開催しています。

‪また「地域の庭」には大きな豚が2匹と鶏が数羽いて、子供たちのアトラクションとなっています。都市の中で家畜を飼うことに関しては衛生管理のエキスパートが活動支援をしており、地域の幼稚園や小学校の子供達にも大人気です。‬

‪2012年現在で登録使用者は50組を超え、さらに長い順番待ちリストがあります。「地域の庭」の使用料は無料ですが、水道使用料として年間45ユーロを各使用者が負担しています。この水も主に植物への水やりのためなので、現在は雨水をタンクに貯めて小さな蛇口を作って利用し始めています。登録申請の時に使用したい面積を希望して事務局が管理をしていますが、基本的にどこに何を植えても自由です。砂場を作っている人や小さな温室を組上げている人もいます。幼い子供たちは天気のよい日は裸で走り回り、大人達はビールを飲みながらバーベキューをして「庭」の手入れを楽しみます。かつてゴミの山であった空き地は、住人の手によって地元の人たちが集う「地域の庭」としてとても魅力的な場所になっています。‬

地域の庭 (Nachbarschaftsgarten e.V.)

リンデナウ地区自治組合(Lindenauer Stadtteilverein e.V.)

ハウスハルテン(HausHalten e.V.)

(ミンクス典子)