グリューナウに建つプラッテンバウは外からの見た目からも明らかなプレハブ住宅であった。一つのプロトタイプの切れ目が一目瞭然だった。特にベランダは模型がそのまま1:1スケールになったような造りをしていて驚いた。中を実際に見学したが、一部屋一部屋は日本のマンションやアパートなどに比べて、広く、洗面浴室はバスタブ付きで、キッチンも各家庭に配置され、小型のラジエーターも備え付けられており、当時ハイスタンダードな建物であったことが容易に想像できる。しかし、時間が経つほど、壁が木板ほどの数センチの暑さしかないことや、全体的な無機質な雰囲気が目立ち始める。また、プラッテンバウの設立時期や背景や状況が日本の戦後の団地とかなり共通していることが興味深い。
プラッテンバウの建物は現在の管理会社によって全面改修されているもの、一部だけ改修されているもの、全く改修されているもの、取り壊されて空き地となっているものが点在する。私たちはこれらが一同に並ぶ広場にいった。
この広場の近くには、以前は小店や幼稚園があったが、近年なくなったとのことであった。この広場に面する全面改修された部分の建物に住み、私たちのグループを窓から興味深そうに見ていたおばちゃんが実際の住民としての意見をくれた。以前は、ぎゅうぎゅうに建物が建てられていたが、私たちが立っていた場所にあった建物が取り壊されたことで、以前より部屋により光が入るようになり、居住環境の質は向上したと嬉しそう?だった。
また取り壊された場所が唯一空き地ではなく活用されている場所にも行った。そこは住民たちで話し合い、誰が作り管理するかを自分たちで決め、建築家やランドスケープアーキテクトなどの介入なしで作り上げた場所であるとのことであった。3つのコンセプトがあり、コマーシャルな使い方をしないこと、人々の動線を考えること、ミーティングスペースにすることがあげられていた。とても地に足のついたコンセプトで説得力がある。
確かにデザインは建築家やランドスケープアーキテクトがとるものとは違うかもしれないが、手入れは行き届いていて、人々が愛着を持ってこの場所を使っていることが伺えた。この方法が人々の空間を使うモチベーションを上げることにつながり、管理をしていく、空間を使って行く期間のほうが、デザインする、建設する期間よりも長いのだと考えると、空間がより長く愛される効果的な方法であると思われた。
(前川英梨子)