「フリースペース」とポスト成長の時代

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1. ポスト成長時代の都市の課題 社会・環境・経済

高度成長と重工業の時代が終わり、先進各国が軒並み低成長の時代に入って久しい。この「ポスト成長」の時代、都市のマネージメントもまた変化を必要としている。大まかに高度成長の時代には国家、バブル経済期のころには市場が都市の成長を牽引してきた。都市の持続的な発展に必要とされる3要素「社会・経済・環境」も、「ポスト成長」の時代においてその内容が変化する。

「社会」の面で顕著なのは公共の担ってきたサービスの低下だ。これまで成長を前提として形成されてきた社会福祉予算はカットされ、教育や福祉を「公」つまり国家と行政に一括してきた体制が崩壊する。一方「私」、つまり市場によって解決できる範囲は限られており、「公」だけでも「私」だけでもない、市民が主体的に「公共」を実践する「新しい公共」が必要とされている。

「経済」の面では、大規模な製造業が衰退し、代わって中小規模の新産業が勃興する。特に創造的産業「クリエイティブインダストリー」と呼ばれる、文化、デザイン、広告、金融などの産業に従事する人々が増加する。一方で企業がグローバルな競争にまきこまれ、非正・不安定な雇用体系がひろがるため、プレカリアートの問題が深刻化する。地域経済(ローカル・ビジネス)、市民経済(シビック・エコノミー)といった、地域内でいかに持続的に経済を回していくかという点が重要な論点となる。

「環境」の面では、エネルギーや食の地産地消が課題となる。これまでの一極集中型の生産・分配・消費システムから多極分散型へ。そして一方的に消費のみが行われる場所としての都市から、市民が生産を行う都市へのパラダイムシフトが必要であり、都市とその近郊の間に食、資源、エネルギーの新たなサイクルをつくることが課題となる。

以上の課題は、国家と市場を主体とした従来型の都市計画・まちづくりだけでは対応できない。「ポスト成長の時代」の都市ではこの二つとともに、社会・経済・環境面における市民の自発的な活動が都市の持続可能性におおきく影響を及ぼす。

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2. ポスト成長時代の空間= 都市の「フリースペース」

一方、ポスト成長時代の都市の空間的特徴は、空き家や空き地といった不動産的価値を失った前時代の遺産・遺構が多く存在することである。これらの空間は、市民が自らの生活や活動のために「自由」に使用できる・しているという意味で都市の「フリースペース」となる可能性を秘めている。空き地・空き家が市民活動を育みサポートする「フリースペース」となるには、以下の条件を満たしていることが重要である。

・ 手頃さ/ Affordability

  資本家ではない一般市民でも買える/借りられる空間(使用価値が交換価値に勝る)

・ 改変可能性 / Flexibility

  空間を生活や活動に合わせて変えられる空間

・ 都市性 / Urbanity

  都市に立地し活動が都市に影響をおよぼす空間

・ 共有性 / Collectivity

  市民が共有でき、共同管理できる空間

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3. 「フリースペース」の概念の論点

- 空き地・空き家が「フリースペース」であるとは限らない

→市民に開かれているかどうかが重要である

-「公共空間」あるいは「公共財」とアーバンフリースペースの関係

→ 公共空間/公共財は公すなわち国家・行政が維持管理する空間/財。市民がこの維持管理を担うことでフリースペースになる。

- (都市)コモンズとしてのフリースペース

→フリースペースは市民が共有的(コレクティブ)に作りだし維持管理するという点で「コモンズ(Commons)」の概念と深い関係がある。とくに都市コモンズ(D.ハーヴェイ)や“Commoning”などの概念がフリースペースを考える上でおおきな示唆を与える。

- 誰にとって「フリー」なのか?公開性の問題

→「フリースペース」が市民によって共同管理されている場合、そこにアクセスできる人々が社会階層、人種、資本の有無によって限定されていることが多い。その意味で、「フリースペース」が全ての人々にとって「フリー」であるとは限らない。各「フリースペース」にはそれぞれの公開性の度合いが存在している。オーセンティシティ(S.ズーキン)の問題が存在している。

- 暫定利用と恒久利用(時限性)

→空間を「フリースペース」として用いることのできる時間的期限が存在している場合がある。不動産価値・市場価値が低下している場合は「フリースペース」として使用可能である場合が多いが、価値が上昇すると難しくなるためである。また市民がコレクティブに土地・建物を取得し、公益的な「フリースペース」として恒久的に維持していく取り組みも存在している。

- ジェントリフィケーションの問題

→暫定的な「フリースペース」が期間終了後に立ち退く際、これを地区の不動産価値を上昇させたとして肯定的にとらえるか、その「価値」を形成した市民活動を追い出し、ジェントリフィケーションが行われたとして批判的にとらえるかの議論が存在している。

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