「とある夜の愉快なご近所さん」
「生活感」をテーマにしたファサード班の夜の部のアイデアは影絵でした。今は空き家となっているGeorg-Schumann-Straße 16の建物にも、建てられた当時は人が住み生活をしいろいろな時間を過ごしてきました。そこで日常生活の様々なシーンを影絵で表現し、中に人が住んでいるかのような効果をもたらそうというのが、私たちのアイデアでした。現実味を帯びるように、 しゃぼん玉の部屋からは、実際に中からしゃぼん玉を吹いたり、サックス奏者のいる部屋からは音楽を流したりしました。 また見るだけではなく参加できるように、建物の外側からも壁面に照明を当て、影で遊べるようにしました。いろいろな道具を入れたお道具箱を用意し、影を使って遊べるようにしました。また、建物の壁面との自分との距離によって影の大きさが変化することによって、巨人になった気分が味わえたり、高い窓まで手が届いたりするおもしろさを出すのも、外側からも照明を当てる目的でした。4階の窓にはお化けを設置し下に糸電話を垂らし、お化けとお話ができるようにしました。子どもたちが下から引っ張って二度も糸がちぎれてしまい、残念ながらお化けとの会話は成立しませんでしたが、違う楽しみ方をしてもらえたようです。
近くに住む人からいつもの真っ暗な建物とは全然違って温かい雰囲気が出ていると言ってもらえたり、通りかかった人たちが立ち止まり影絵を眺めたり照明の前に立ち影で遊んだり、建物全体や影絵のある窓の写真を撮ったり、様々な楽しみ方をしてもらえたようです。建物の内側からと外側からの照明の数や強度、影絵の仕掛け、空き家の内部での作業など、問題点や困難な点も多々ありましたが、その分学ぶことも多く、最終的に、自分たちも楽しみながら作業を進めることができ、GSSを訪れた人たちにも楽しんでもらえてよかったです。ひと晩という短い「間」ではあったものの、GSS16という空き家を利用し、普段は人気もなく真っ暗な「間」に明かりを灯し再び生活感を、という私たちのコンセプトが、影絵を通して道行く人に届き、Zwischennutzungの面白さ、可能性を感じることができました。
(桂川茜)