ライプツィヒの北東フォルクマールスドルフ(Volkmarsdorf)という地区に、広さ約3000㎡の大きな空地があります。2012年の春からこの場所が市民の農園として使われ始めています。
入り口にはコンテナを改造してできた事務所と手作りの東屋があります。どちらも基礎を設けずに移設可能な状態です。トイレは工事現場の仮設のものを利用しています。
個人の農地スペースと共同のスペースが分けられていました。こちらは個人のスペース。始まったばかりですがすでに10人ほどの人がミニ農園を作っていました。手作りの温室、かわいいですね。
こちらが共同のスペース。とにかく広い!まだ使われていない空間がたくさんありました。なぜこんな広いスペースが住宅地の一角に残っているのか聞いたところ、実はここ、昔コンドーム工場が建っていたそうです。そのため、共同のスペースの方には一部土壌汚染が残っており、地面に直接作物を植えることができません。
そこで彼らは上の写真のように木材で囲いをつくり、その中に土を入れて、キュウリ、ほうれん草、ハーブ、キャベツなどの作物を育てています。木材は近所の建設現場からもらってきたそうです。他にも、
土管もこのとおりプランター代わりになり、
苗床はパン屋さんからもらってきたパンのケース、
トマトを育てる温室もあります。プランター代わりにしているものは、グリューワインというクリスマスに飲むホットワインが入っていたケースです。
こちらはジャガイモ。袋に入れて育てています。ジャガイモの成長にあわせて土の量を簡単に増やすことができるので、袋で育てるとたくさん収穫できるそうです。
この農園の創設メンバー4人のうち2人は学生です。他にも地理学の研究者や近隣の人々が関わっています。彼女らはこ土地の地主と一年ごとにZwischennutzung(一時的な利用)の契約をしていて、この土地を完全に無料で借りています。その代わり敷地の境界に新しく柵を設けたり、冬場は除雪をしてゴミを定期的に処理するといった条件があります。地主としても、単に休閑地にしておくより、「公的な土地利用」をすることで税金が軽減されるというメリットがあります。Zwischennutzungという仕組みは、地主と使いたい人の両者にメリットがある事がわかります。一方、常に一年契約なので、地主の意向によっては次の年から延長できなくなる可能性があります。プランターで作物を育てているのは、「いつでも引越しできる農園」というコンセプトのためでもあるそうです。
近隣コミュニティとの結びつきもでき始めています。このカラフルなプランターは近くの幼稚園児たちが作りました。園児たちは週に数回、作物の世話をしにやって来ては実った収穫物を手にとって帰って行くそうです。
農園ではつねに水の確保が問題です。ドイツの水道代は日本に比べてさらに高額で、水やりのために水道水を利用していては出費がかさむ一方です。この農園では敷地に面している廃墟の雨樋を利用して雨水を貯めています。ただしタンク2つでは水量が足りないので、地下水を汲む井戸も設置していますがこちらは工場跡地であるため水質検査の結果待ちで使用はまだ開始していません。隣接するもう1つの建物のオーナーの好意により、現在は水道水を貯めるタンクを2つ追加して併設利用しています。
近所に残っている物と空間を有効に再利用した、まさにブリコラージュの空間。今後の発展が楽しみです!
WEB : Querbeet Leipzig
(大谷 悠)